犬の「車イス」って、どういうイメージでしょうか。
飼い主さんからよく聞くことは、
「車イスを使い始めたら、
もう自力で歩くことができなくなるのではないか」
という不安です。
実際はどうなのでしょう?
シニア犬は、後ろ足がだんだん弱くなってきて、
ふらついてしまったり、
座り込んでしまったりすることがあります。
これは中医学的にみると
「腎」の機能が衰えてきているということで、
後ろ足のふらつきの他に、耳が遠くなる、
白内障になる、関節炎が起きやすくなる、
尿漏れや腎疾患が起きやすくなる、
などの症状も一緒に認められることがあります。
思うように歩けなかったり、
転んでしまったりすることが多くなると、
飼い主さんも歩かせることが怖くなり、
またわんちゃんも歩きたくなくなって
しまうことがあります。
後ろ足の筋力はどんどん衰え、
やがて歩くこと、立ち上がること、
四つ足で姿勢を維持することが困難になって、
寝たきりに移行してしまうこともあります。
後ろ足のふらつきが出て、歩きづらくなったり、
歩くことが嫌になってきた時に、
歩行を補助する車イスを使用すると、
安心して動き回れることで、
後ろ足の動かし方を思い出し、
また、前足も一生懸命使います。
その後、車イスなしで歩けるようになることもあります。
ラブラドールレトリバーのA君は16歳の男の子。
今年(2019年)5月頃、歩行がやや困難になり、
車イスを試してみました。
初めて使ったのに、A君は車イスの扱いがとても上手で、
クルクル方向転換をしたり、外を散歩したり、
とても嬉しそうでした。
でも、まだなんとか自力歩行ができていたため、
この時は試用のみでした。
その2か月後くらいから、A君は徐々に歩けなくなり、
ごはんを食べる時は立っていられたのですが、
その後それもできなくなってしまいました。
お気に入りのソファーでほぼ寝たきりの
生活になってしまったA君の16歳のお誕生日に、
飼い主さんはA君に車イスをプレゼントしました。
どうなったと思いますか?
初めは車イスに乗って、
姿勢を維持するのがやっとでした。
そのうち、前足のみで動き始め、
後ろ足をちょっぴり動かすようになりました。
さらに日が経つと、
後ろ足に体重を乗せることができるようになり、
体を支えられるようになりました。
そして、後ろ足も使って歩き始め、
車イスなしでも5~6歩歩くようになったんです。
今は車イスで大好きなお散歩も行けるようになりました。
わんちゃんの能力ってすごいですね。
歩くことをちゃんと思い出します。
寝たきりになると、臓器臓腑の動きも悪くなり、
足の裏で地面を踏みしめなくなるので、
血液やリンパの循環が悪くなり、
浮腫みや血行不良、関節の腫脹などが起こります。
わんちゃんは、四つ足の姿勢をとることが
とても大切なんです。
飼い主さんからとても愛されているA君は、
楽しいシニアライフを送っています。
車イスを使うタイミングは
早いほうがもちろんいいのですが、
A君のような事例もたくさんあります。
飼い主さんが諦めないことも大切ですね。
車イスはフィッティングが重要で、体に合わなかったり、
わんちゃんの状況に合わないものを使用すると
逆効果になってしまうこともあります。
当クリニックでは、わんちゃんの状況を診て、
どのような車イスがよいかアドバイスさせていただきます。
お気軽にご相談ください。
もちろん、車イスの使用のみが大切な訳ではありません。
筋力を維持するための体幹トレーニング、
運動やマッサージの仕方、
日常のケア、食事の工夫などについても
アドバイスさせていただきます。
(シニア犬に限らず、何らかの疾病で歩行が困難になっているわんちゃんもご相談ください)